浦島太郎

しっくり来ないお話はいくつかあるけれど、浦島太郎はしっくり来ない程度ではなく、不可思議、謎だと子供の頃から思っていました。

 

亀を助けて竜宮城へ招待され、開けてはならないお土産を持たされ、開けたらお爺さんになる。

昔話に教訓はあっても無くても良いのですが、良い事をすれば良い事が起きて、約束を破ったら悪い事が起きる、そんな教訓として納得している方が多いかと思います。

教訓ありきのお話だと仮定すれば、舌切り雀のように良い青年と悪い青年がいて、悪い青年は玉手箱を開けてしまいお爺さんになる、と対象が2人になると思います。

どんなに良い事をして生きてきても、約束を破るとお爺さんになっちゃうよ、という教訓と捉える事も出来るでしょうか。

 

ではなぜ乙姫様は開けてはならない玉手箱を太郎に渡したのでしょうか。善行を積んでいる太郎にリスクしかない物を渡す乙姫様、詐欺師レベルの悪人と言う事になります。

善人ほど騙しやすいカモです。亀と苛めっ子も共犯者で段取り良く行えば容易く騙せます、という詐欺師養成書、と解釈する事も可能でしょうか。さすがにソレは無しで良いかと思います。

 

詐欺師養成書を無しとするなら考えられるのは、お話には伝承途中で省略されてしまった言葉がある、が最も現実的かと思います。そしてその省略された言葉は

『本当に困った時まで開けてはなりません』

だったのではないでしょうか。

すると教訓は大きく変わってくるのです。太郎は浜辺に戻ってすぐに玉手箱を開けたのではないのです。地上に戻ると太郎はとうの昔に海で死んだ事になっていて、自宅のあった場所はもう何年も前から荒屋となっている、そして困り果てた太郎は浜辺に戻り、玉手箱を開ける。

太郎は未来に戻ってきた。そしてお爺さんになる、つまり本来の姿に戻っただけです。本来の姿に戻った太郎は村に帰り、死んだと思われていた太郎が帰ってきた!と飲めや歌えやの大騒ぎ。老後を幸せに暮らしましたとさ。のハッピーエンド。教訓は

『楽しい時間ってあっ!という間だよね、同じ時間軸だなんて信じられない』

教訓というよりあるあるネタです。

 

昔読んだ本の登場人物が言っていました。

『真実とは最も矛盾の少ない仮説である』

私の中ではこれが浦島太郎の真実…、

 

ではないんですけどね。多分、私の想像ではとても悲しいお話。100%想像ですが。

 

幼い子供がいる母親が漁師の夫を海で亡くす。その地方では悪い事をすると海の神様が怒って海の底へ…、の様な伝承がある。なので幼子は母に尋ねる。『お父さんは悪い事をしたから神様が怒ったの?』そして母親が幼子に聞かせたお話。

 

なのでハッピーエンドでなくてはならないのです。